すべての表現は、“意志”とともに。【はりー / mon.you.moyo】

リノベーションスタイル屈指の人気コンテンツ『ルームシェアコラム 帰りに牛乳買ってきて』の筆者、はりーさん。そうです。部屋に転がり込まれた方、コップと靴をどんどん使う方、そして、片付けない方です(あ、それは2人ともか……)
『帰りに牛乳買ってきて』では、ポップなトーンのイラストと、どこか癒し要素を感じさせるストーリーが人気のはりーさんですが、実はもう1つの顔がありました。もう1つというか、完全に別。別すぎる顔、なのです。
そんな複数の人格とクリエイティビティが、1つの身体に、そして脳内に矛盾することなく同居しているという事実が、はりーさんの作家性をより深いものにしているのかもしれません。

いつか欲しいものを絶対に手に入れる

現代に今なお残る決まりごとや暗黙のルール。繰り返しになりますが、はりーさんの作品は、民話をモチーフにしつつも、それらに対する違和感や疑問が込められています。

「たとえば和装で結婚式を挙げる時の『角隠し』という文化は、女性が結婚するに際して、感情をあらわにしたり、強い態度をとったりしないように、つまり“鬼にならないように、角を隠す”という意味があるという説があって、民話でも扱われています。いわゆる良妻賢母を目指し、嫉妬などで鬼になってはいけないという戒めですね。

そんな謂れを考えても、女性はそうとう抑圧されていたんじゃないかなと。だから私の作品の中で開放させたいんです」

また、はりーさんの描く絵には、もう1つ特徴があります。それはポイントとなる箇所に、赤色が使われていること。周りの色との鮮やかなコントラストに、思わず目が惹きつけられます。

「私の使う赤は、血の色。そして血に乗って体じゅうを駆け巡る思想や情熱を表現しています。血というのは、体の中に確実に存在しているのに、私たちは普段、肌でそれを隠している。

その隠している色をあえて使うことで、その人物に強い感情があることを示したいんです」

  • 血の赤。そして情熱や思想の赤が入ることで、絵に命が吹き込まれます。

最後に『mon.you.moyo(=もんようもよう)』という不思議な響きを持つ自身のブランドについて、聞いてみました。

「“mon”はフランス語で『私』、“you”は英語で『あなた』、“moyo”はスワヒリ語で『たましい』、つなげると『私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる』という意味になります。

“女性はこうあるべき”とか、“男だったら、こうふるまえ”とか、そういったレギュレーションを理由にあきらめることなく、ほしいものを手に入れてほしい。その時に、私のスカーフが寄り添っていることができれば幸せだなっていう思いでつけました」

ブランド名にまで吹き込まれた、はりーさんの強い意志。それは決してブレることがありません。

「古くから残っている決まりごとが本当に必要なものか、本当に意味があるのか、見極めていきたい。女性だからってニコニコしておくこともないし、ずっと愛想よくしておく必要もない。男性だって働きたくなければ、働かなくていいんです。

いつか、そんな時代がくるかも知れませんね」

はにかみながら、展望を語るはりーさん。その表情や仕草は、やはりどこにでもいる今どきの女の子のそれと変わりません。しかし、見据える先には、壮大すぎる野望があります。

自身の表現に、確固たる目的や大義を見出しているクリエイターの眼差しは、かくも強く、清らかで、美しいものなのでしょうか。それを知るのに、十分な時間でした。

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PHOTO by Genta Hisada

はりー

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テキストレーター(テキスト、テキスタイル、イラストレーション)。

2014年 テキストとイラストレーションをテキスタイルにして身につけるブランド《mon.you.moyo》を開始。
強い女の子をモチーフに、自分も一緒に強くなるためのイラストレーションを展開しています。
Monはフランス語で「私の」、youは英語で「あなた」、moyoはスワヒリ語で「たましい」。
私のあなた、そのたましいを必ず手に入れる。

mon.you.moyo 公式サイト

WRITER'S VOICE

ギャップ萌え、どころじゃない。

思想性の強い言葉が後から後から出てきているので、もしかしたらフェミニズムを強く主張するどこぞの女性大学教授的な(!?)印象があるかも知れませんが、実は原稿をつくる時に、取材用のICレコーダーの声が聞き取れないくらい、小さくおしとやかな声で、取材中も「恥ずかしい」「しゃべれない」……の連続なんです、はりーさん。そのギャップがとても魅力的ですね。

はりーさんの世界観をさらに堪能したい方は、本サイトの『帰りに牛乳買ってきて』や、本文内でも紹介した『日本のヤバい女の子』をご覧あれ。

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