vol.17 大人も成長したい

子が「ぴやの やりたい!」というようになったことに背中を押されて、半年ぐらい前にずっとほしかった電子ピアノを買った。

その頃の私は自信を失っていた。

子のイヤイヤ期で子育てを楽しむ余裕がなくなり、怒ってしまうことが増えた。子育て以外のことには十分な時間を割けてなくて全部中途半端なうえに、一番時間をかけられる子育てさえもうまくいっていない。どんどん自信がなくなって本当につらかった。

これまでの人生で、不器用な自分なりに何かを積み重ねてきたつもりだったけれど、仕事や趣味に没頭する時間も気力も足りなくて、積み重ねてきたはずのことが今まで通りできなくなって、今の自分には何もないと思うようになった。
今まであんなに時間があったのに、吹けば飛ぶようなものしか積み重ねてこなかったのではないかと心細くなった。
励みになると思って素敵に歳を重ねている人のインタビュー記事などを読んでみても、毎日生きるだけで精一杯の私とは違って、ちゃんと何かを積み重ねている人たちだ……とまぶしく感じてしまう。

10年ぶりぐらいにピアノを弾いてみて、最初は楽譜を追うだけで精一杯で、気分転換どころか余計ストレスが溜まる、全然楽しくない……と思っていたけれど、何日か練習していると、1曲通して弾けるようになり、上手くはないけれど気分転換にはなるレベルになった。

5〜10分もあれば1曲弾けるというのもちょうどいい。絵を描いたり何か作ったりするならじっくり没頭する時間がほしいし、読書や映画もできるなら途中で中断させられたくはない。ずっと、パッと短い時間でできる気分転換を求めていたのだった。

そうしているうちに子のイヤイヤ期は終わり、平和な日々がまたやってきた。相変わらず気力は足りていないしもともと少なかった自信は取り戻せていない。それでもほんの少しずつピアノは上達していっている。休み休み、ほんのちょっとだけど成長している感じがする。

昔弾いていたけどいつのまにか弾けなくなってしまった曲をまた練習しているだけなので、成長というよりリハビリみたいな感じだ。
それでも少し前の自分ができなかったことができるようになるのはうれしい。もう少ししたら、昔弾いていた曲以外の初めての曲にも挑戦したいなぁ。

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amycco.さんの著書「文鳥ちゃん」

yabai

文鳥ちゃんは、羽のお手入れと恋に夢中な白文鳥の女の子。
人間の「あきぴょん&えみ夫妻」と一緒に楽しく暮らしています。
ところがある日、文鳥ちゃんはあきぴょんに恋をしてしまい……
あきぴょんをめぐる恋の三角関係の行方は……?
¥1,512(税込)

『文鳥ちゃん』

amycco.著
出版年月日 2016/4/19
ページ数 111p
定価 本体1,400円+税

amycco.

amycco.prof

イラストレーター。

雑誌や書籍、雑貨などを中心にイラストレーターとして活動中。毎日文鳥に怒られている。

『文鳥ちゃん』(洋泉社)発売中。

公式サイト:http://amycco.com/