夫と妻と、犬が一匹。築37年の中古マンションを買って、リノベーションをする話です。

家族紹介

family

行儀の悪い話なのですが、トイレで本を読むタイプの家庭で育ちました。
だからわたしは昔からトイレが長い。母も長いし、姉も長い。トイレに置いてある漫画を数冊読んだり、小説を一冊読み切ることだってあるくらい、長い。しかしこんな行儀の悪い風習は受け継いではいけない。そう思うので、トイレに本棚は置いていません。

既存のトイレをいかしつつ

このコラムを最初から読んでくださっている方はご存知かと思いますが、今回のリノベーションにおいて、お風呂・洗面・トイレの水回りは、ほとんど手をつけていません。構造上の都合、予算の都合、です。なのでトイレに関しても、もともと施されていた「新築そっくりさん」で入れられていたINAXのトイレをそのまま取り付けてもらいました。

ただ、いかんせん「新築そっくりさん」仕様は、新築マンションのそれであるので、新築マンションの感じが苦手だからこそリノベーションという選択をしている我々にとってはちょっとアレ、ということで、表面的なあしらいは変更してもらうことにしたのです。

  • 元のトイレ
    もともとの、新築マンションっぽいきれいなトイレ。ぜんぜんよい。ぜんぜんよいのですけれども。

このトイレで、大きく手を入れずに変更可能なのは、壁の色天井の色、それから後ろの棚、ということでした。

これまで、部屋のカラーリングに関しては、シンプルにシンプルに、白とグレー(モルタル)と茶(木)、で統一してきた我々。トイレに関しても、なんとなく白くしようという雰囲気が流れておりました。しかし、プラン打ち合わせも終盤に差しかかっていたこの頃、はっきり申し上げて、「シンプル」に飽きていたのです、わたし。

ターコイズブルーの壁

「トイレの壁をぜんぶ色にしたらヘンですか?」

というわたしの突然の提案に対して、フジコさんは笑顔で「いいと思います」と言い、夫は「まあどっちでも……」という顔をしていました。

ほとんど仕切りのない我々の78平米において、完全に区切られた空間というのはトイレと洗面室のみです。洗面室は、床や壁をいじるのは仕様上コストがかかるということで、棚板をつるつるの白い化粧板から木に変えるくらいでおさめることにしていました。なので、別空間扱いにしてちょっとトーンを変える、という遊びを入れるとしたら、トイレしかありませんでした。

  • 完成間取り図(トイレ斜線)
    改めまして、間取りです。

「こういう色にしたいです」

と、打ち合わせの場で「壁 ターコイズブルー」などで検索し、参考画像をフジコさんに見せました。実際にそれで検索をかけると、ほんとうのトルコ石のような鮮やかなターコイズブルーの壁の部屋がたくさん出てくるのですが、わたしのイメージは少しくすんだブルーで、いちばん理想に近かった参考画像がこちらです。

  • IMG_6169
  • image1

何をどう検索してどこでこの画像を拾ったのか思い出せず参照元を明記できないのですが(申し訳ありません)、フジコさんにこの写真を見せて「青い壁に赤いドライフラワーなどが映えるとかわいいかな、と思っている」と伝えると「イメージ共有できました!」と言ってくれました。

パーツを探す旅

トイレのイメージを共有してくれたフジコさんから、「棚の取っ手と、タオルハンガーと、トイレットペーパーホルダーを用意してください」と言われました。物を選ばなければnuさんでも用意はしてもらえるのですが、好きなものを選びたい派の我々は、自分たちでお店を回ってパーツを探すことにしたのです。

そして、これが案外、難航しました。パーツといえば、恵比寿にある「P.F.S. PARTS CENTER」だ! と思って二度ほど足を運んだのですが、コレといったものは見つからず。あとはパーツを売っているのはどこだろう? と検索に検索を重ね、たどり着いたのが三宿にある「THE GLOBE」でした。わたしは知らなかったのですが、アンティーク家具業界ではかなりメジャーなお店らしく。たしかに店舗も大きく、取扱商品の数もめちゃくちゃ多かったです。もっと早く知っておきたかった。

012-globe_menu_interior_4176-thumb-1200xauto-379

参照元:THE GLOBE

パーツもたくさんありました。最初、どこにあるのか分からなくて、英国食器の森のようなところに入ってしまい「ちがう……こっちのアンティークじゃない……」と不安になりましたけれども、スタッフのお姉さんに尋ねると、わたしが求めていたパーツの森のようなところに案内してもらえました。

  • パーツ1
  • パーツ2

パーツの森で、棚の取っ手と、タオルハンガーを見つけました。取っ手のほうは真鍮で、タオルハンガーはアイアンなので、素材が違うのですが、並べて見たら統一感はあったし、GLOBEのお兄さんと「変ですかね?」「変ではないと思います。色味はいっしょだし」などと相談しながら買いました。この日は夫が仕事だったのでわたしひとりで買い物に来ていたのですが、この時点ですでに「◯日までに用意してください」と言われた期日を過ぎていて、わりと焦っていたわけなのですが。

しかし、トイレでいちばん重要なパーツが見つかりませんでした。そう、トイレットペーパーホルダーです。トイレットペーパーホルダー。呼称が長いけれども、他に言いようがない。トイレットペーパーホルダー。

あるにはあるのです。「P.F.S. PARTS CENTER」にも「THE GLOBE」にも、あるにはありました。しかし、どれもこれも、カバーがないのです。ぶっきらぼうな棒に引っ掛けるだけ、みたいなやつばかりでした。わたしはカバーがないとうまく紙が切れないので、カバーがあるものを探していたのです

  • IMG_7235
    カバーのないホルダー。このタイプならば色んなお店にありました。

「あとはトイレットペーパーホルダーが揃えば完璧なのですが、無いですね……」と話しつつ、「もう、カバーなくてもいいかな……買ってしまおうかな……」とわたしが妥協しようとしたとき、GLOBEのお兄さんが教えてくれたことがあります。

「あのカバーは、トイレットペーパーを切るときに押さえる役割もあるんですけど、それよりも、手を洗ったりしたときに飛ぶ水滴をカバーする役割があって。お店とかだと、一個のロールをすぐ使い切るから(多少濡れたりしても)まあ大丈夫なんでしょうけど、ご自宅の場合は、使い切るのに時間がかかるから、結構へたったりするので、僕個人としては、カバーがあるほうがいいと思います」と。

そして「まあ、ウチには(カバー付きの商品が)無いんですけど……」と笑っていたGLOBEのお兄さん。とても感じがよかったです。ナルホド、と思ったわたしは、やはりカバー付きのトイレットペーパーホルダーを探そうと思い、取っ手とタオルハンガーだけを買ってお店をあとにしたのでした。

トイレットペーパーホルダー.com

インターネットという広大な海に、無いものなんて無いのかもしれません。本気を出して探したら「トイレットペーパーホルダー.com」というサイトにたどり着きました。逆になぜこのタイミングまでたどり着かなかったのか。

すごい。あんなに見つからなかったトイレットペーパーホルダーが、こんなにある。あらゆるスタイルにフィットするトイレットペーパーホルダーが、ある。そしてわたしが求めていた、「素材はアンティーク調だが、あしらいはシンプルな、カバー付きのトイレットペーパーホルダー」も、ありました。よかった。よかったです。ありがとう、トイレットペーパーホルダー.com

というわけで、どうにかトイレのパーツを統一感をもって揃えることができました。べつに、そんなに特殊なものを望んだわけではないし、むしろアイアンやアンティーク加工の真鍮なんてありがちなテイストだと思うのですが、思いのほか苦労したパーツ探し。なんにせよ「どこに売っているか知っている」というのは大切なことだなと思いました。

  • IMG_7761
    届きました。
  • IMG_7760
    このトイレットペーパーはちょっと太巻きなのですが、ホルダー自体はイメージどおり。

落書きできる壁紙

そんなこんなで、壁と天井をターコイズブルーに、床と棚は黒になったトイレです。

  • トイレ
    これからいろいろ飾ったりしたい。
  • 取っ手
    取っ手。
  • タオルハンガー
    タオルハンガー

最後にフジコさんが「そういえばこの壁紙は、チョークが使えるんです」と言いました。完全に色だけで選んだ壁紙であったので、思わぬオプション機能に「え?」と面食らったのですが、「チョークが使えて、雑巾で消えるらしいです。わたしもやったことはないんですけど」とフジコさんがなんだか嬉しそうに言うので、わたしもなんだか楽しくなって、書いてみました。ちょうどチョークがあったので。

  • IMG_9171
    何を書けばいいか分からなかったので、なぞなぞを出題しておきました。

濡れ雑巾で、そこそこきれいに消えました。今後この機能を使うかどうかは分からないけれども、うちのトイレはチョークで落書きができるということが分かりました。落書きができないよりは、できるほうがいいので、うれしいです。

Q本かよ

qmoto_ap

俳優/コピーライター/デザイナー
舞台を中心に俳優として活動する傍ら、雑誌、広告でコピーやデザインの仕事を手がけている。
2017年に中古マンションを購入しリノベーション。夫と二人暮らし。曇天という名の犬もいる。